以前のイラク湿原プロジェクトに関連して

Water quality monitoring イラク湿原プロジェクト (2004-2009年):
主な結果と教訓

国連主導のイラク復興の取り組みの中、UNEP技術・産業・経済局の国際環境技術センターは、以前のプロジェクトでイラク湿原の持続可能な管理支援に関して先導的な役割を果たし、主に現地での活動に焦点をしぼり、湿原の地域住民やイラク各省に緊急的な支援を行いました。プロジェクトの主な成果は以下のとおりです。

  1. 環境破壊の被害にさらされた住民への即時緩和として、イラク湿原に居住する最大25,000人の住民に対し、持続可能な飲料水供給設備と下水設備を提供しました。代替エネルギーの利用と下水処理、湿原管理のための適切な手法が明示されました。

  2. 環境管理において、現地住民の権利が認められ、合法的なステークホルダー(利害関係者)として認知されました。UNEPの支援の下、湿原管理のためのコミュニティとして何ができるかが議論され、立案・実行されました。

  3. イラク各省、州、現地グループ、大学機関、国際機関を結ぶ湿原情報ネットワーク(MIN)が構築されたことにより、データと分析結果の交換が可能となり、湿原管理計画の立案に向けての情報交換が促進されました。プロジェクトでは、ハードウェア、ソフトウェアを提供し、運用に関する集中的な研修の実施の後、イラク当局に移譲されました。

  4. イラク南部湿原の環境についてのさまざまなデータ(水質と生物多様性、植生と水領域、社会経済と人口統計学的調査)が、プロジェクトの支援により収集・分析されました。UNEPプロジェクト実施以前は、多くの分野について、信頼性のあるデータが存在しなかったため、イラクや他の機関は少ない科学データを基に介入を決定をせざるを得ませんでした。データの収集分析は、おおむねイラクの関係機関によってに実施され、科学的な根拠に則った持続可能な管理決定ができるようになりました。

  5. 援助国間の協調を主導し、イラク南部湿原管理にかかわるイラク国内機関と国際機関から承認されました。UNEPは協調介入の調整役として任命されました。

  6. UNEPの取り組みは、特にイラク湿原について、多くのメディアに取り上げられ、イラク復興についての悲観的なニュースが多い中、前向きな話題となりました。イラク環境省とともに実施されたこのプロジェクトによって、イラク湿原の国際的な認知度はあがり、、困難な条件下において実施された持続可能な開発への取り組みの成果が広く周知されるようになりました。

  7. UNEPのとったアプローチはイラク国内機関とコミュニティに認められ、支持されました。地元の湿原地域住民は、「UNEPは現場での変化をもたらし、人々の生活を向上させた数少ない国際機関のひとつである」と正式にコメントしました。イラク環境省もまた、イラク南部湿原プロジェクトを技術協力のモデルケースとして認知しました。

Community level workshop
以前のイラク湿原プロジェクトから得た主な教訓には以下のようなものがあります。

  1. プロジェクトの実施に、現地に足を踏み入れることと管理体制の確立は必要不可欠である。

  2. 特に現地グループの積極的な参加や責任の移譲など、ステークホルダー(利害関係者)のプロジェクトへの参画は、本当に必要なことを見極め、安全を確保し、取り組みを継続するために必要である。

  3. 組織的な枠組みにおける制約は、評価の上、事前にプロジェクトの中に組み込むべきである。

  4. データ収集、研修の実施を網羅する包括的なプロジェクトは、現場でのプラスの作用をもたらすのに効果的である。

  5. 長期的な復興と開発への成果を得るには、長期に渡る支援が必要である。


以前のプロジェクトからの継続性

Water treatment plantUNEP-UNESCO共同プロジェクトの形成そのものが、継続的な支援の必要性とイラク湿原の持続可能な管理に対する国際協力について、イラク関係機関とUNEPが達した一つの決断でした。さらに、プロジェクト実施体制、情報管理ネットワーク、データとその評価、ハードウェア、また国際レベルでの調整の仕組みなど、このプロジェクトには、以前のプロジェクトから得た多くの成果と結果を組み込んでいます。

このプロジェクトでは、イラク国内のプロジェクト実施体制についても、環境省内に設立されたプロジェクト実施部署との連携、在イラクの調整官、州や現地機関とのネットワークなど、以前のプロジェクトで成功したモデルを引き続き活用しています。

水質、生物多様性、植生分布など、以前のプロジェクトで実施した主な分析結果は、以下の2つの見解から新規プロジェクトに対しても有効です。(a) 分析結果は湿原地域の環境状況を時系列で示す寸描であり、新しいデータと比較するのに有用である、(b) 必要な分析機器、ソフトウェアなどは、以前のプロジェクト実施期間中に十分な研修の実施とともにイラク関係機関に移譲してあることから、新規プロジェクトにおいてもイラク関係機関がそれらを活用できる。それによって、大幅な経費削減が可能となるだけでなく、プロジェクトに対するイラク側の所在や責任に対する意識が向上する。